
熱々のピザ、パキッと新鮮なサラダ、香り高いアヒージョ……。
どんな料理にも使えて、料理が格段に美味しくなる『オリーブオイル』。
静岡市に、その魅力に引きこまれた一人の女性がいます。
それが『CREA FARM』の代表、西村やす子さんです。


オリーブオイルを紹介・販売
きっかけは「好きだから」
オリーブオイルは、海外では古くから親しまれ、日常的に使われてきた調味料の代表格。一般家庭ではアヒージョやスープに使うほか、生のままピザやサラダ、マリネなどに使うこともあり、日本で例えると「醤油くらい馴染みの深い味」なんだそうです。
元々料理好きだったという西村さんは、オリーブ好きの趣味が高じ、なんと2013年には『オリーブオイルソムリエ』の資格を取得しました。
そんな西村さんに聞くと、日本で流通しているオリーブオイルのうち、
「98%は外国産のもの」なんだそうです。
……ということは、日本国内で生産され、販売されているのはわずか2%。
しかも、輸入されてきた商品の多くは、偽装品や酸化してしまった商品のため、本来「生」で楽しめて、栄養もあるオリーブの本物の美味しさを味わえないのだそう。
それなら、自分が立ち上がって、静岡からオリーブを広げよう。
こうして、西村さんは静岡でオリーブの栽培を始めることを決めました。

見晴らしがよく富士山も駿河湾も見渡せます
静岡のオリーブを
とはいえ、栽培を始めるまでに、土地を貸してもらったり、育成に協力してもらったり……オリーブ自体、静岡で大規模で育てているところも少なく、そもそもオリーブは苗木を植え、実をつけるまで数年という時間がかかる植物。
今まで全く別の仕事をしていた西村さんが新しく取り組みを始めることは、こういった問題もあり、決して簡単なことではありませんでした。
それでも諦めなかった西村さんは、各所を駆け回り、話し合って、一歩一歩前進を続けます。そして、2015年、ついに念願のオリーブ栽培が始まりました。
第一号となったのは、静岡市清水区にある土地。
富士山や駿河湾、伊豆半島まで見える絶景スポットです。
クレアファーム オリーブ農園 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
海外では8000年以上の歴史があるオリーブですが、日本での栽培方法は確立されていません。さらに国内でも珍しい、石がゴロゴロと転がるような畑での栽培。それなら、と海外の専門家を呼んで、アドバイスをもらうと、きちんと成長が始まりました!それでも個体差があったり、品種も違ったり、また台風の影響などでうまくいかないことも。日がよく当たるこの土地で、日々試行錯誤を続けています。

CREA TABLE #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
伝えるということ
西村さんの農業の取り組みは、栽培だけにとどまりません。
オリーブオイルの本当の味わい、また可能性を知ってもらいたいという思いから、まずは2014年に静岡の街中にアンテナショップを開設。海外から取り寄せた数十種類のオリーブオイルが置かれた店内で、専門のスタッフがアドバイスをしてくれます。
また、協力農家の方が作っているお茶やみかんなどの農産物は素晴らしいものばかり。もっと価値を伝えるお手伝いをしたいと考え、「六次産業化支援」にも取り組んでいます。
例えば、早摘みみかんを使った“ほろにが乙女の泡い夢”という炭酸ドリンク。
日本平で収穫された青みかんを、甘酸っぱくもほろ苦い大人の味に仕上げています。かわいらしい瓶を見たときになんだか癒されるパッケージ。
女性目線で企画・開発することで、酸味の強い早摘みみかんが、“乙女の夢”になって生まれ変わりました。
こうした一次産品に、付加価値をつけていく取り組みも進めています。

広がり続ける
「これから」の話
オリーブオイルから始まった、西村さんと農業の出会い。
「商品ではなく、静岡という地域を売りたいんです」と西村さんは言います。
そんな思いに応えるように、西村さんの周りには、その取り組みに共感する人たちが集まってきています。
今では県内に点在する畑で、2000本を超えるオリーブがすくすくと成長中。
これからも、オリーブの搾油所や農園の観光資源化など、やりたいことはたくさん。
『CREA FARM』は、これからも『食』の可能性を広げ続けていきます。

CREA FARMのオリジナル商品
いつ、どこで、だれと、どんな気持ちで食べるんだろう。
考え抜かれて作られた『CREA FARM』の商品は、一目見て
「手元に置いておきたい」ものばかり。
UMAMI OIL・UMAMI PATE
冷蔵庫にあるとちょっと嬉しい、シックなデザインの『食べるオリーブオイル』
●UMAMI OIL:静岡のわさび・シラスと最高品質のオリーブオイルの掛け合わせ。
●UMAMI PATE:焼津港で水揚げされた一本釣りのカツオを贅沢に使用。バルバルカーニバル
お気に入りのお酒に合わせてつまみたい、手軽でかわいいパッケージが目印。パスタやパエリアと和えても美味しい。
ほろにが乙女の泡い夢
青みかんのほろ苦さとはちみつの甘さは、多感な乙女の夢のよう。そのまま飲んでも、お酒と割っても、どちらも美味しくいただけます。
ご飯のとき、お風呂のとき、あるいは仕事中や寝る前、運転中。
「こうだったらいいのに」、「こうしたら面白いかも」、「こんなことがしたいなあ」
そう思う瞬間はあっても、そこから実際に動き出せる人は、全体のうち何パーセントなんでしょう。ソムリエの資格を取得してから、わずか数年で2000本以上のオリーブを育てるに至った西村さんは、自身について「楽しみながらチャレンジを続けてます」そう言って笑っていました。
たくさんの人が栄養をあげて、ぴょこんと出た芽が、やがて大きな花を咲かせ、実を結ぶ。
オリーブから始まった小さな動きは、今や静岡と農業を結ぶ大きな取り組みとなりつつあります。
Writer:ほた子