株式会社 ほてい 静岡県の西部に位置する掛川市。かつては武田・徳川軍が領地争いを繰り広げた土地、高天神山(たかてんじんやま)の麓に拠点を構える会社があります。

視線の位置を上に移すと、そこにおわすのは「ほてい」様。
福耳でにっこりとほほ笑むそのすぐ下に書かれた「ライスセンター」の文字。
そう、ここには米づくりに励む人々がいます。
お話を伺ったのは、『株式会社 ほてい』代表である松本 辰範さんです。

“米づくりを極めること”

『ほてい』は、先代である松本さんの父親が平成17年に始めた米の生産会社です。松本さんがこの会社を継いだのはそれから10年後、平成27年のこと。仕事を引き継いで米づくりを行っていた松本さんでしたが、継いだ数年後に、ある転機が訪れました。

米には「食味値」という基準があります。タンパク質や水分など、4つの成分を測定して100点満点で表す食味値は、いわゆる米の“おいしさの基準”です。この点数は80点を超えるとじゅうぶん美味しいと言えるそうですが、当時、松本さんが作っていた米を計ったとき、その米の食味値が70点台だったのだといいます。
「その数値が出たとき、すごく悔しい思いをしたんです」
その経験が、松本さんに火をつけました。では、徹底的に研究して、食味値を上げておいしいお米を作ってやろう、と決心した瞬間です。

写真:代表の松本辰範(たつのり)さん
▲ にっこり微笑むほてい様が目印

“米作りの恩師”との出会い

そう思った松本さんが出会ったのは、長年無農薬米を栽培していた一人の男性でした。
「植物というのは生きている、呼吸を感じろ」「何を欲しがっているのか聞け」と口癖のように言っていたその言葉の意味が、はじめはわからなかったと言います。「わからないから、じゃあ毎日田圃(たんぼ)に行ってみよう」、そう思って毎日足繁く自分の米作りの現場に向かいました。そうすると、「少しずつ、稲が何を欲しがっているのかわかるようになった」そうです。稲穂の形の変化など、細かいところに気づけるようになっていった松本さんは、いつのまにか米の気持ちがわかるようになっていきました。

そうして出来上がった『ほてい』のコシヒカリは、ある年食味値92という数字を出し、食味のコンクールで1位を獲得しました。その後も米コン、と呼ばれる全国的に有名な大会でも入賞をするなど、美味しさが公に認められるまでに至ったのです。

写真: 田植え以前の育苗も手は抜けません。時期が来るまで、ハウスで大切に育てられます 写真: 田植え以前の育苗も手は抜けません。時期が来るまで、ハウスで大切に育てられます
▲ 田植え以前の育苗も手は抜けません。時期が来るまで、ハウスで大切に育てられます

自然との共存、自然との闘い

この食味値に至るまでには、米づくりに必要な『水・土・肥料』の要素をどう作るか、活かすかが重要だそうです。
『ほてい』の水は、高天神の山から流れてくる湧き水を直に入れています。周囲はドジョウ、サワガニの他、梅雨になるとゲンジボタルも現れるようなきれいな水環境。
そして肥料はJAS認定を受けた有機肥料のみを使用しています。
有機栽培は、安易な害虫駆除を行うことができません。実際、『ほてい』のコシヒカリは農薬を一切使用せず、また『キヌムスメ』に関しても除草は1回しか行っていません。こうすることで、稲を植えた田圃からはどんどんと草が生えてきます。草取り、虫取りと、夏の間は毎日大忙し。そして、農薬を多く使用した田圃と比べて、収穫量もかなり減ってしまうのが実情です。

写真:山から流れてくるきれいな山水をそのまま使用しています 写真:山から流れてくるきれいな山水をそのまま使用しています
▲ 山から流れてくるきれいな山水をそのまま使用しています

間断潅水について―水をただただやればいいというわけではなく、中干し期が終わったらあえて「水をあげず」ストレスを与えることで、米自体のうまみが凝縮されていきます。美味しい米づくりには、米が水を欲しがっているタイミングをつかんで、バランスを見てコントロールすることも重要だそう。

米作りは8~10月が繁忙期。稲の背が低い時に雑草が伸びてしまうと稲が草に負けてしまうため、毎日一日中作業をしなければいけないんだそうです。しかしその手作業の分、おいしさはついてきてくれます。

“二児の親”として譲れないこと

収量や手間のデメリットがあるにも関わらず、『ほてい』が「農薬を極限まで使わない」と決めているのは、『ほてい』にとって「味」以外でも「安全・安心」をモットーとしているからです。
松本さんは『ほてい』の代表でもあり、同時に2人の子を持つ父親でもあります。その子どもが「10年20年食べ続けても影響のない」米づくりをするには、美味しさだけでなく、安全も担保されているものをつくっていく必要があります。『ほてい』がつくる米は、自分の子どもへの、また未来の子どもたちへの親心も込められているのです。

写真:松本さんのお子さん。健康に育ってほしい、そんな思いで作られているお米です

“もみ貯蔵”―手の届くギリギリまで、手間をかけたい

こうして手間暇かけてつくり出した米だからこそ、できる限り新鮮な状態で食べてほしい――そんな思いで考案したのが、「もみ貯蔵」のコシヒカリです。
通常、収穫された米は精米された後に保管されます。しかし「もみ貯蔵」は脱穀する前の、もみがらがついたままで貯蔵します。そして注文が入った後、発送の直前に初めて色選機や精米機にかけていきます。こうすることで、“新米”の食味のまま届けることができるのです。

『ほてい』のコシヒカリは完全な無農薬米。注文が入るたびに無農薬の証明のためにJAまで米を持って行ったり、無農薬米専用の機械を使用したりと、手間暇は何倍も増えます
それでもその美味しさのために、『ほてい』はその手間を惜しみません。
“美味しくて安全な米”を、一人でも多くの家庭に、一人でも多くの人に届けるために。

写真:「ほてい」のコシヒカリの粒は不ぞろい。それこそが農薬を使っていない、無農薬米の証明でもあります
▲ 「ほてい」のコシヒカリの粒は不ぞろい。
それこそが農薬を使っていない、無農薬米の証明でもあります

お遣い物にも、食べ比べにも

『ほてい』で作っている3品種が食べ比べられるセットがあります。「いつも“完全無農薬”のものばかりは食べられないかもしれないけど、贈り物としてや、自分用の食べ比べ用としても口に入れてほしい」と松本さん。

写真:もみ貯蔵のコシヒカリをはじめとした、キヌムスメ、にこまるの3種食べ比べセット 写真:もみ貯蔵のコシヒカリをはじめとした、キヌムスメ、にこまるの3種食べ比べセット
▲ もみ貯蔵のコシヒカリを定番品として、その他2つはその年に美味しくできた品種をお届けします。

“掛川”という地域をあげてつくる米

「米どころでなくても、美味しいお米が作れることを証明したい」
そんな松本さんは、この地域をあげて無農薬米に取り組む未来を目指しています。
食の安全はもちろん、手間暇のかかる無農薬米は、地域の高齢者の方たちの再雇用などの可能性も秘めています。
松本さんが見ているのは、『食』を通じたこれからの大きな未来
『ほてい』がつくりだしていたのは、そんな松本さんの家族や従業員が力と思いを合わせた唯一無二の「掛川の米」でした。

写真:穂の状態を確認。除草は一度きりなので、虫もつきます
▲ 穂の状態を確認。除草は一度きりなので、虫もつきます

shizumo スタッフレポート

『ほてい』という名前を付けたのは会社を立ち上げたご本人でもある松本さんのお父様だそうです。「〇〇工業、とかいう会社名だと忘れちゃうけど、この名前だとわかりやすくて、ロゴマークだけでも思い出してもらえる」そう言う松本さんの優しい笑顔が印象的でした。
自然に囲まれ、青々とした稲穂に心地よい風が吹き抜ける8月の終わりの田圃は、これから収穫時期を迎えます。
福耳、笑顔でおおらかな“ほてい”様に、松本さんが目指す未来をずっと見守り続けて、そして福を運んできてほしい。そう感じた取材となりました。

Writer:ほた子

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