磐田駅から県道を南に5分。
車を走らせると、牛のマークが印象的なお店が見えます。
その名も「お肉の専門店 むらかみ」。
出迎えてくれたのは、笑顔が素敵な村上琢也さん。
100年続く、老舗のお肉屋さんの5代目です。
「肉のむらかみ」の創業は大正8年までさかのぼります。
初代の村上権助が荷車一つから始めた
「村上精肉店」の創業から100年、
今ではお肉の卸、加工、販売までを手がけ、
地域の人に愛され続けています。

▲◀5代目の村上さんは情熱とユーモアを持ち合わせた方

店内すべて
毎日厳選されたお肉が並びます

愛され続ける人気商品のひとつ
「肉の味噌漬け」は絶品!

どことなく愛嬌のある牛のマークが目印です



「肉のむらかみ」は九州産黒毛和牛特約店であるため、
ショーケースには質の高い和牛がずらりと並ぶほか、飼料にこだわった地元の麦豚『極楽豚』や
九州産の鶏肉、さらにアキレスや豚足など、珍しい部位の種類も多く取り扱っています。
店内にあるものすべてが、子どもに食べさせられる「安全なお肉」であること、
それが「むらかみ」の“あたりまえ”。
「(飼料などに使われる)添加物の影響は、大人より子どもの方が受けるから」と村上さん。
お店では安心・安全なものしか仕入れず、産地の視察も行っています。




▲ 最高といわれるA5ランクの中でも、更に品質の違いがあるそうです

▲ 飼料に輸入トウモロコシは一切使わず、麦類を主体に育てた地元の麦豚。
霜降りが多くコクがあります

「肉のむらかみ」では、お肉以外にも多くのお惣菜を販売しています。
お肉屋さんの定番とも言えるメンチカツやコロッケはもちろん、今晩のおかずになりそうな唐揚げやポテトサラダ、おやつにぴったりのカレーパン、スイートドック……。
大人から子どもまでわくわくしそうなメニューがたくさん並んでいます。

一つ一つを店内で手作りしているという
多種多様なお惣菜は、主婦の強い味方です。






2018年10月、「肉のむらかみ」が創業100年をきっかけに作った商品が“百年ハンバーグ”。
初代が売っていた当時のハンバーグ、「焼きメンチ」のレシピをアレンジして、
現代に蘇らせた特別な一品です。



黒毛和牛と遠州麦豚、あいびき肉のミンチ。
もちろん店内で行っています!

玉ねぎ、トマトピューレ、魚醤など、
特製の原料を混ぜ合わせます


最後は
一つ一つを丸くまとめてできあがり。
てのひら大のサイズです!
















作り方は、冷凍のままフライパンに水を入れて加熱するという簡単さ。
お肉を巻いてあることで肉汁が残り、また崩れ防止にもなっているそうです。
素材はもちろん無添加。ひとつひとつが手作りの、お肉屋さんのハンバーグです。

一口にお肉といっても、牛、豚、鶏、それぞれの種類も飼育環境も千差万別。
一頭一頭大切に育てられるものから、大量に生産するためにストレスフルな環境で育てられたものまで、すべてのものにバックグラウンドがあるのだと、村上さんは言います。
加えて、目の前の食品がどこから来て、どうやって作られてここに並んでいるのか、
「口に入れるものに対して、もっと意識を向けてほしい」とも。
「うちのハンバーグはすぐダメになるんですよ」と笑う村上さん。
それは、“便利な”添加物をまったく使用せず、“原点”の作り方を貫いているから。
さらに、一度完成した「100年ハンバーグ」も、原料の配分を変えるなど、
より美味しくなるように、今も試行錯誤を続けています。
品質は高く。美味しさは進化させながら、安全なものを。
「肉のむらかみ」の“原点”は、これからも変わることはありません。

お話をお聞きすると、村上さんのお肉にとどまらない、食品に関する膨大な知識が窺えました。近年問題に上がっている食品添加物のこと、商品に貼られる食品表示の記載のこと、工場で大量に作られる生産性重視の加工品のこと……。
「食べものって、社会そのものを作ってるじゃない」と村上さん。
「食の安全」という、当たり前であってそうでないもの。
日々の生活の中で、誰もが生きるために必要な「食」の一分野を担っている。
熱心にお話してくださる村上さんから、そんな責任感と誇りを感じました。
Writer:ほた子