株式会社八幡屋茶舗 遠州森町。茶師の繊細な技術が美味しいお茶作りを支える

周智郡森町

田園と茶畑が広がる自然豊かな風景が広がるこの町は、
県内でも茶の産地として有名な“お茶処”である。
今の安井健一さんで四代目となる “八幡屋茶舗”は、創業から百余年、
当初から変わらぬこの森町で製茶・販売を続けるお茶問屋だ。

お茶の葉

師走。ツンとした冬の空気につつまれた店内。「拝見場」と呼ばれる台の上には、
「拝見盆」に盛られた器が二つ。それぞれの器には茶葉が盛られている。
「この二つの違い、わかりますか」
問いかけられ、凝視する。色は同じに見える。葉のとがり具合だろうか?長さ?
はっきりと答えることができない。
「淹れてみるとわかります」
微笑みながらそう教えてくれたのは、四代目であり「茶師」である安井健一さんだ。
茶師とは、茶葉の特徴や品質を判断して選定し、合組(ごうぐみ)と呼ばれる
ブレンドを行う職人のことだ。
——その後、湯呑みで出てきたお茶は、その色も、香りも、味も、全くの別物だった。
茶葉の段階で、ここまでの違いがわかるものなのだろうか。

茶の産地として有名な森町。
この町で百余年続く“八幡屋茶舗”の魅力にスポットを当てた。

歴史の深いお茶問屋
▲歴史の深いお茶問屋
▼工場(こうば)の近くで販売も行う
工場(こうば)の近くで販売も行う
専務の安井秀彦さん
▲専務の安井秀彦さん
巨大な火入れの機械は作業も一苦労だ
▲巨大な火入れの機械は作業も一苦労だ
数ある受賞歴は技術が認められた証だ
▲数ある受賞歴は技術が認められた証だ

お話を伺ったのは「茶師」である4代目の安井健一さんと、専務である安井秀彦さん。

ブレンド技術、ニーズがあること
お茶問屋の仕事とは何かご存じだろうか。茶葉のもととなる「荒茶」を仕入れ、
ただただ「製茶」すればよいというものではない。
ひとくちに「お茶」といってもその味、香り、見た目は千差万別。
それぞれのニーズに合ったお茶を仕入れ、そして『ブレンドして、
新たな味に創り上げる』技術こそが問屋の仕事であり、
同時に腕の見せ所でもある。製茶の工程のなかで、特にその味の決め手となるのが、
「合組」と、「火入れ」である。

“火入れ職人”

「火入れ」は、お茶農家から仕入れてきた「荒茶」を、最終的な味に仕上げるための工程だ。この火入れは、機械で選別され、大きさがそろった茶葉を乾燥させる作業であり、これがないと飲料としての美味しい「お茶」が仕上がっていかない。
マイクロ波で水分を飛ばし、火であぶっていく「火入れ」は、設定した温度が少し変わるだけでその色、香り、味わいすべてが変わってしまうそうだ。
時間が経つと茶葉は深い「青色」に変わっていくそうだが、その分香りはどんどんと強くなっていく。お客さんはどんな色、香りを求めているのか。それに合わせるためにはどう調整していくべきか。
“八幡屋茶舗”の火入れ職人は、お客様のニーズに合わせてその塩梅を変えていく。
「1℃違うだけで全然変わってきますね」
蓄積された経験と、繊細で高度な技術が必要とされる工程だ。

茶師で4代目の安井健一さん
▲茶師で4代目の安井健一さん

“茶師”

火入れを経て出来上がった様々な種類の茶葉をブレンドしていくのが「合組」。
茶葉ごと、そして加工方法によって、味は勿論、色合い、香り、形など、それぞれ異なる特徴を持つ。
その特徴をしっかりと頭と舌で把握し、お客様の要望に応えながらブレンドしていくこの作業は、五感すべてを駆使した、“茶師”としての腕の見せ所でもある。
“八幡屋茶舗”では、代表である安井健一さん自らが行っている。

「八幡屋のお茶」とは

茶葉の特性を掴んで、1℃単位で緻密な味わいを作り上げる「火入れ」。その年の茶葉を把握して、1g単位で秤で計量し、ニーズに合った最適な「答え」を見つける「合組」。膨大な知識量と繊細で正確な感性、そして経験が求められる、とっておきの“業”だ。
だからこそ八幡屋で味わえるお茶の種類はバラエティに富んでいる。
それぞれのお茶を同時に淹れれば、「お茶」と呼ばれるものがどんなに多種多様なのかを楽しむことができるだろう。茶葉で味に違いがあること。そして同じ産地、同じ茶葉でも、ブレンドの具合によって大きく変わってくること。“八幡屋茶舗”では、「お茶」の、繊細な世界を自由に旅することができる。

①お茶農家から仕入れてきた“荒茶”はまず選別される
②選別機を通した後。ここからさらに細かくなる
③湯を入れる前の状態を手で触り、こうして鼻と目で確認、飲んで舌で味を確認する
湯飲みに入れたお茶

①お茶農家から仕入れてきた“荒茶”はまず
選別される ②選別機を通した後。ここから
さらに細かくなる ③湯を入れる前の状態を
手で触り、こうして鼻と目で確認、飲んで
舌で味を確認する

倉庫には出荷前の仕上がり茶葉がずらりと並ぶ
▲倉庫には出荷前の仕上がり茶葉がずらりと並ぶ

“「安全」「安心」の約束された商品を販売することを忘れません”

これは、“八幡屋茶舗”の社訓の一つである。
求めているお茶の味を提供することはもちろん、前提となる衛生管理も軽んじることはない。仕入れた原料から製品までの追跡管理や、金属・異物除去の機械の導入、LEDライトの導入など、より衛生的な状態でお客様に提供できるような体制が整備されている。

淹れたお茶

「静岡茶」の魅力

八幡屋茶舗では、全国の茶処の茶葉を仕入れている。その中でも静岡茶についてどう思っているのか。
静岡のお茶は、その品質の高さはもちろん、他のお茶処と比べ、お茶の“渋み”を感じられる茶葉なのだそうだ。
専務の安井秀彦さんは「その渋みが、お茶を飲んでいる、という感じになります」
と顔をほころばせた。

“お茶”のこれから

お茶問屋として、時代のニーズに応えて様々なお茶を作り続けてきた
“八幡屋茶舗”。
現在、生活スタイルの変化によって「お茶を飲む」習慣自体は減っているものの、「もう一度、お茶を急須で淹れて飲む時代が来る」、茶師である安井健一さんはそう確信している。
その「塩梅」でどんな味にもなる、終わりのない茶の世界。
百余年の時を経ても、お客様の要望に応えるその真摯な姿勢、より美味しい「お茶」を作り続けようとするその挑戦の炎は絶え間なく灯り続けている。

shizumo スタッフレポート

江戸や明治の時代から今まで、消えていった慣習も文化も数知れず。
そして安井さんが言うように、忙しない日常の中で急須でお茶を飲む機会もまた、減ってきたように思います。
それでも“八幡屋茶舗”で心を込めて作られたお茶を頂いたひと時に、忙しい日常にこそ、
“お茶の時間”は必要なのかもしれない、そう思いました。
茶葉の種類も、お茶の種類も千差万別。そしてその手間一つで変わるその繊細な味の魅力。安井さんが合組したお茶を口にして、深甚たるお茶の世界に、一歩足を踏み入れた気がしました。

Writer:ほた子

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